「グリーンヒル」と聞いて漫画ファンが即座に思い浮かべるのは、『行け!稲中卓球部』でギャグ漫画の金字塔を打ち立てた古谷実が、週刊ヤングマガジンにて1999年から2000年にかけて連載した異色作です。全3巻というコンパクトな構成でありながら、本作が2026年の今なおカルト的な支持を集め続ける決定的な理由は、その類まれな心理描写と突き放したような結末にあります。
物語は、目標もなく無為な大学生活を送っていた青年・関口裕太が、バイクショップ「グリーンヒル」に集う風変わりな大人たちと出会うところから始まります。中でも中心人物であるリーダー・岡憲は、見栄っ張りで女性にだらしなく、嘘と虚勢にまみれた怠惰な男として描かれます。表層的にはオフビートなギャグ作品の体裁を取りながら、読者が直面させられるのは「何者にもなれない人間の滑稽さと哀愁」という底知れぬ実存的恐怖です。
多くの読者を戦慄させた漫画の結末は、劇的な大団円や感動的な成長譚とは程遠いものでした。関口はグリーンヒルの奇妙な人間模様に巻き込まれながらも、最終的には自らのモラトリアムに区切りをつけ、現実の社会生活へと戻っていきます。一方、岡憲をはじめとする残されたメンバーたちは、何も変わらぬ怠惰な日常のなかに取り残され、関口の記憶からも次第に薄れていくという、冷徹なまでの日常回帰が描かれました。
このエンディングについて、当時の批評誌や関係者の回顧録では「次作『ヒミズ』へと続く、人間の暗部と絶望を直視する作風への決定的転換点」と評されています。夢を見せることを放棄し、現実社会の生々しい無常観を叩きつけるその幕引きこそが、20年以上の歳月を経てもなお「グリーンヒルの結末の真相」として語り継がれる最大の要因です。