節分に豆を用いる最大の理由は、古来の言霊信仰と五行思想にあります。民俗学の伝承記録によると、豆は「魔滅(まめ=魔を滅する)」や「魔目(まめ=鬼の目を射る)」に通じる強力な呪力を持つ穀物と位置づけられてきました。米や麦と並ぶ五穀の中でも、大豆は粒が大きく硬いため、鬼を打ち払う武器としても、神仏への神聖なお供え物としても格好の存在だったのです。
ここで極めて重要なのが、節分の豆は必ず「炒った大豆(煎り大豆)」でなければならないという儀礼上の絶対条件です。生の豆をまいて後から芽が出てしまうと「魔の芽(厄災)が出る」として不吉を招くと恐れられました。「魔の目を射る(炒る)」ことで災厄を完全に焼き尽くし、封じ込めた状態にしたものが「福豆」と呼ばれます。その炒った豆を神棚に供えて神仏の力を宿らせ、豆まきで邪気を祓った後にいただくことで、1年間の無病息災を願う体内浄化の儀式が完成します。