疾走感と泥臭い情熱が同居する『風が強く吹いている』は、スポーツをテーマにした青春小説の金字塔として不動の地位を築いている。たった10人で箱根駅伝という過酷な頂点を目指す恵まれない陸上部の物語だ。寄せ集めのメンバーが葛藤し、傷つきながらも一歩一歩前へ進む姿は、スポーツ小説の枠組みを超えた人間ドラマとして迫ってくる。
風を切る音、ランナーの荒い息遣い、そして個々の内面で繰り広げられる葛藤。三浦しをんは驚くべきリアリティで陸上競技の孤独と連帯を描き切った。ラジオドラマ、舞台、実写映画、テレビアニメと多様なメディア展開を遂げた本作は、走ることの美しさと愚直さを読者の心に強烈に焼き付ける。