彼が住処として選んだのは、富士山の豊かな自然に囲まれた山林だった。そこで始めたのは、公的な電気や都市ガスに頼らない「オフグリッド」な暮らしだ。太陽光パネルによる自家発電、薪ストーブでの暖房と調理、雨水や湧水の活用——言葉で言うのは容易いが、その実践には果てしない手間と知恵が求められる。
朝は日の出とともに起き、太陽の沈みとともに夜を迎える。薪を割り、畑を耕し、自然のサイクルと呼吸を合わせる日常。便利さと引き換えに現代人が失ってしまった「生きていく力」を、彼は山の中で一つひとつ手繰り寄せていった。