インターネット上の掲示板やSNSでは、手汗を根本的に完治させる手段として「ETS手術(胸腔鏡下交感神経遮断術)」の話題がしばしば取り上げられます。「長年の苦しみから解放された」「手がサラサラになって人生が変わった」という絶賛の声がある一方、治療を検討する上で絶対に看過できない深刻な副作用が存在します。それが代償性発汗です。
代償性発汗とは、手のひらからの発汗を遮断した代償として、背中、胸部、太もも、臀部など身体の別の部位から大量の汗が噴き出す現象です。発生率はほぼ100%に近いとされ、その程度には個人差があるものの、重症例では「冬場でもシャツが絞れるほど濡れる」「ズボンが汗で濡れて外出できない」といった過酷な状況に陥るケースが後を絶ちません。
当事者コミュニティや相談窓口に寄せられる生の手記を紐解くと、「手汗は止まったが、背中の汗が酷すぎて以前より生活の質(QOL)が落ちた」「一度神経を切除・焼灼すると不可逆で元に戻せないことをもっと真剣に考えるべきだった」という悲痛な告白が多数見受けられます。近年は神経をクリップで挟む可逆的な術式も試みられていますが、クリップを除去しても機能が完全に回復する保証はありません。保存的治療をすべてやり切った重症患者以外は、安易に選択すべきではない外科的手法であることを正しく認識しておく必要があります。