人間はなぜ、冷静な状態であれば絶対にあり得ない桁数間違いや売買方向の逆転を起こしてしまうのでしょうか。行動経済学および認知心理学の観点から見ると、そこには明確な心理的メカニズムが存在します。
第一に挙げられるのが「認知トンネル(トンネルビジョン)」です。相場が急変動し、保有銘柄の株価が急落または急騰した瞬間、トレーダーの脳内では強いストレス反応が生じ、視野が極端に狭まります。「早く買わなければ乗り遅れる」「一刻も早く損切りしなければ破滅する」という焦燥感が先行すると、確認画面の数値や「買・売」のタブ選択という基本的な視覚情報が脳内でフィルタリングされ、無意識に決定ボタンを連打してしまう現象です。
第二に「確証バイアス」と「ルーティンによる慢心」です。数千回、数万回と繰り返してきた日常的な発注作業において、脳は省エネのために「今回も正しく入力できているはずだ」と自動補正してしまいます。指値を修正したつもりが入力を確定していなかったり、成行注文にチェックが入ったまま送信してしまったりするミスは、過度な慣れから生じる典型的な認知の隙間と言えます。