紀元前4世紀の哲学者アリストテレスは、主著『ニコマコス倫理学』の中で、友情を3つの類型に分類しました。この古典的な洞察は、2000年以上を経た現在でも人間関係の構造を完璧に射抜いています。
第一の型は「有用性の友情」です。相手が自分にとって何らかの利益をもたらすから付き合う関係であり、ビジネスネットワークやママ友・PTA仲間、情報交換のためのグループがこれに該当します。この関係は、双方が提供できるメリットが失われた瞬間に解消されます。
第二の型は「快楽の友情」です。一緒にいて楽しい、趣味が合う、お酒が美味しいといった快感情に基づく関係です。若年期の交友関係や飲み友達の多くはこの型に属しますが、環境の変化や好みの変化によって容易に移ろいゆきます。
そして第三の型が、最も高貴とされる「徳(善)の友情」です。相手の富や容姿、都合の良さではなく、相手の「人間性そのもの」を愛し、互いの幸福を純粋に願い合える関係です。アリストテレスは、この徳の友情こそが「完全な友情」であり、互いの徳を高め合う稀有な存在だと説きました。
大人が抱く「友達が減った」「人間関係が希薄になった」という焦燥感の正体は、環境の変化によって学生時代に持っていた有用性や快楽の友情が自然に剥落した結果に過ぎません。残るべき少数の関係だけが選別されているプロセスなのです。