「2次元のデザインを現実に走らせることは物理的に不可能なのか」――その常識を覆したのが、福岡県在住のカスタムビルダー・手嶋成則(てつ)氏でした。手嶋氏は構想から完成まで約7年の歳月と推定1000万円以上の私費を投じ、外観のみならず内部骨格から完全ハンドメイドでAKIRA 金田のバイク 実車を作り上げました。
完成したマシンは、フロントカウルの油圧リフトアップギミック、フルデジタルのスピードメーターやナビ画面の発光、さらには後退用リバースモーターに至るまで劇中描写を極限まで再現。その圧倒的な完成度が大友克洋氏本人の目に留まり、2012年に開催された原画展「大友克洋原画展(GENGA展)」の公式展示車両として抜擢され、原作者公認レプリカとして正式に認定されました。
特筆すべきは、この実車が単なる展示用モックアップではなく、国土交通省の保安基準をクリアしてナンバープレートを取得した公道走行可能車両である点です。日本の厳格な車検制度を通すため、手嶋氏は陸運局と綿密な協議を重ね、ワンオフで制作した鋼管トラスフレームに市販大型スクーターの足回りとエンジンを移植。側車付軽二輪(トライク)あるいは軽二輪としての認証要件を満たすことで、堂々と日本の一般道を走る権利を勝ち取りました。
東日本大震災の復興支援プロジェクトでは、この実車で日本列島を縦断するチャリティランを敢行。全国のファンを熱狂させた雄姿は、現在もカスタムバイク史の伝説として語り継がれています。