インターネット上の医療情報や一部の医師コミュニティの書き込みにおいて、「Sepsis-3が導入されたことでSIRSは役目を終えた、時代遅れの基準だ」という言説が散見されます。しかし、これは臨床の実態を反映していない決定的な誤解です。
確かにSepsis-3において、敗血症の「診断基準」としてのSIRSは除外されました。理由は、激しい運動をした後や単純な感冒でもSIRSの4項目中2項目を満たしてしまうため、「特異度が低すぎる」と批判されたからです。しかし、集中治療の最前線では、特異度が低いことこそが「早期警報システム」としての最大の価値であると再評価されています。
qSOFAが陽性(2項目以上)になる段階では、すでに意識障害や低血圧という不可逆的な臓器障害が顕在化しているケースが少なくありません。一方、SIRSの呼吸数増加や頻脈を感知できれば、血圧が保たれている「代償期」の段階で強力な介入が可能です。臨床医学が2026年に至る過程で導き出した結論は、「SIRSを切り捨てるのではなく、超高感度の早期スクリーニングとしてSIRSを用い、重症度判定にはSOFAを用いる」という役割分担の確立でした。古い概念として片付けることこそが、最も危険な医療安全上の落とし穴です。