ド派手な表紙デザインの裏側で、モノづくりとしての真摯な技術革新が脈々と息づいていたことを忘れてはならない。その立役者となったのが、裁縫・手芸用具のトップメーカーとして知られる株式会社ミササである。同社をはじめとする専門メーカーは、1970年代から80年代にかけて、それまでの重くて割れやすい素材から、軽くて衝撃に強いプラスチック成形技術へのシフトを急速に進めた。
特に画期的だったのが、内部の整理整頓を容易にする仕切り付き二段トレイの開発だ。針、糸、ハサミ、指ぬき、ルレットといった多様な道具が、ひと目でどこにあるか分かり、かつ持ち運んでも中で散らばらない構造。さらに、ハサミの刃先に保護キャップを付けたり、目盛りが見やすいビニールメジャーを開発したりと、安全面での配慮も徹底された。子どもの手になじむサイズ感と耐久性の両立は、日本の精密な金型技術があったからこそ実現できた芸芸である。
こうした教材メーカーの創意工夫は、日本の手芸用品業界全体にも計り知れないインパクトを与えた。小学校での家庭科授業を通じて、質の高い手工具に触れた子どもたちは、大人になっても「自分で服を直す」「小物を手作りする」というクラフトの基礎体験を身につけていく。学童用の裁縫セットは、まさに日本人のものづくり精神を幼少期から育む、知られざるインフラとしての役割を果たしていたと言える。