衝撃的なニュースが駆け巡った直後、歌舞伎の興行を担う松竹株式会社は前代未聞の事態への対応に追われた。出演中だった公演の急な代役立て、さらにはNHKをはじめとする各テレビ局での出演見合わせなど、芸能界全般に及んだ影響は計り知れない。伝統芸能界の信用は大きく揺らぐこととなった。
そうした渦中で注目を集めたのが、いとこにあたる俳優の香川照之(市川中車)の存在だ。香川自身も過去に自身の問題で表舞台からの後退を余儀なくされていたが、事件後は澤瀉屋の存続をかけて市川中車として精力的に舞台に立ち続け、一門の崩壊を防ぐべく尽力した。血縁ゆえの複雑な葛藤を抱えながらも、舞台を守ろうとする意志がそこにはあった。