「吹上トンネル」と一口に呼んでも、実際には吹上峠には掘削時期が異なる3世代のトンネルが並行して存在しています。この構造の複雑さが、オカルト的な神秘性を高める要因にもなってきました。
初代「旧旧吹上トンネル(吹上隧道)」は、1904年(明治37年)に竣工しました。全長約56メートル、高さ約3メートルと小規模ながら、内壁全体に精緻な赤レンガが積まれた重厚な構造を持ちます。当時、難所であった吹上峠を荷馬車が越えられるように開削されたもので、通行料を徴収する日本初の民間有料道路トンネルのひとつとしても知られています。
2代目「旧吹上トンネル」は、戦後のモータリゼーションに対応するため1953年(昭和28年)に開通したコンクリート造のトンネルです。全長約245メートルで、昭和期の主要生活道路として利用されましたが、幅員が狭く大型車のすれ違いが困難だったことに加え、歩道がなく歩行者にとって極めて危険な道路環境でした。
3代目「新吹上トンネル」は、1993年(平成5年)に開通した全長604メートルの近代的なトンネルです。現在、東京都道53号青梅飯能線の幹線ルートとして稼働しており、照明完備の2車線道路として安全かつ快適な往来を支えています。新トンネルの開通に伴い、2代目の旧トンネルはその役目を終え、廃道となりました。