スイスが世界中から自死を望む人々を受け入れる国となった根底には、独自の法解釈と個人の自己決定権を最優先する哲学的背景が存在します。
スイス刑法第115条は「利己的な動機から他人の自殺を教唆または幇助した者は処罰される」と規定しています。この条文を裏返すと、金銭的利益や遺産目当てといった「利己的な動機」が存在しない限り、自殺を幇助する行為そのものは罪に問われません。この法律は本来、1940年代に制定された古い規定でしたが、1980年代以降、権利意識の高まりとともに「自己の死期を自ら決める権利」を支援する民間組織の活動根拠として解釈されるようになりました。
スイス社会では、本人の明確な意思と尊厳を守る行為は個人の基本的人権の一部であるという考え方が広く共有されています。国家が個人の生と死に過度に介入すべきではないというリバタリアン的な価値観が、寛容な法運用の土台となっています。