インバウンド需要の沸騰に伴い、海鮮丼一杯に3,000円〜5,000円の値がつくことも珍しくなくなった浅草の飲食市場。そのただ中にあって、魚料理遠州屋が半世紀以上にわたり圧倒的な支持を集める背景には、極めて強固な仕入れ力と経営哲学が存在します。
厨房を預かる職人陣は、毎朝夜明けとともに豊洲市場へ足を運び、長年培われた仲卸との強固な信頼関係をベースに、その日最高の天然鮮魚を目利きしています。市場流通の段階で中間マージンを極力削ぎ落とし、獲れたての魚介を一括して自店で捌くことで、一般的な高級割烹の半額近い単価感を実現しているのです。
実際に提供される刺身盛り合わせを見れば、その理由は一目瞭然です。一切れごとの厚み、角の立ち方、脂の乗り具合は、大量仕入れのチェーン店とは一線を画しています。「浅草の魚好きで遠州屋を知らない者はモグリ」と界隈で語り継がれるのは、単なるノスタルジーではなく、皿の上に現れる確固たる品質の証拠があるからです。