当時の日本国内において、在日朝鮮人に対する偏見と抑圧は日常化していた。「非国民」や「疎外された存在」として冷酷な視線が向けられる中、ゲンの父・大吉だけは一人の人間として朴さんに寄り添った。「人間はみな同じじゃ」という大吉の揺るぎない信念。それが、虐げられていた朴さんの心に消えることのない温かい火をともしたのだ。
原爆投下後、すべてが灰燼に帰した広島で、朴さんは自らも被爆の恐怖と身体的苦痛に苛まれながら、米や食料をかき集めてゲンの家へと届けた。自らの命すら危うい極限状態で、なぜそこまで出来たのか。理由は決して複雑ではない。受けた温もりを、そのまま返したかった。ただそれだけだ。理屈を超えた土壇場での人間性が、そこには溢れていた。