全国各地の駅ホームから立ち食いそば屋が次々と撤退する中、東神奈川駅ホームの日栄軒がこれほどまでに熱烈な支持を集め続けるのはなぜでしょうか。その答えは、単なるノスタルジーではなく、一杯の丼に凝縮された調理の矜持にあります。
名物「穴子天そば」の食券を渡し、数十秒で供される丼を見て、初めて訪れた人の多くが息を呑みます。丼の直径を軽々と上回り、両端が堂々とはみ出した穴子は約20センチ超。衣は適度な厚みを持たせつつもカラリと揚げられており、時間が経つにつれて漆黒のつゆを吸い込み、ふんわりとした食感へと変化していきます。仕入れ値が高騰し続ける昨今の飲食業界において、この規格外のサイズ感を維持し続けている企業努力には驚嘆せざるを得ません。
また、立ち食いそば名店としての地位を不動のものにしているのが、店舗奥で丹念に取られる自家製つゆの評判です。鰹節や宗田節の力強い出汁に、濃口醤油とみりんをビシッと利かせた関東風の辛口つゆは、甘さに逃げない潔いキレがあります。油をまとった大判の穴子天がこの濃いつゆに浸ることで、コクと甘みが溶け出し、最後の一滴まで飲み干したくなる黄金比のスープが完成するのです。