ダチョウ倶楽部の代名詞である「押すなよ」のルーツは、1980年代後半から1990年代にかけて放送された日本テレビ系バラエティ番組『スーパージョッキー』の看板コーナー「熱湯コマーシャル」、そして過酷を極めた特番『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』に遡ります。
当時、若手芸人たちにとって熱湯風呂は文字通り体を張った戦場でした。まだ明確な「型」が定まっていなかった初期、浴槽のフチに立った上島竜兵さんは、本気で熱い湯を前にして恐怖のあまり「押すなよ! 本当に熱いから押すなよ!」と叫んでいました。しかし、バラエティの空気を察知したビートたけしさんや共演者たちが容赦なく背中を押したことで、スタジオは大爆笑に包まれます。
「本気で嫌がれば嫌がるほど、落ちたときのリアクションが劇的に面白くなる」――この現場のハプニングから得た手応えこそが、ギャグ誕生の瞬間でした。単なる事故的な笑いにとどめず、舞台やスタジオで何度も試行錯誤を重ねることで、「フリ(前振り)」を極限まで強調してから落とすという、計算された演出へと洗練させていったのです。