筋肉は、日常生活で受ける負荷よりも強い物理的ストレス(過負荷)を与えられたときに初めて、それに耐えうる組織へと再構築されます。これがトレーニングの根本原則である漸進性過負荷の原則です。人間の身体は驚くほど順応性が高く、同じ重量・同じ回数の刺激を続けていると、筋肉は「現状維持で十分」と判断し、それ以上の筋肥大を起こさなくなります。
筋生理学において、筋肥大を引き起こす最大の主因は「メカニカルテンション(機械的張力)」です。筋繊維が強く引き伸ばされながら力を発揮する際、細胞内のシグナル伝達経路(mTORなど)が刺激され、タンパク質合成が促進されます。ここで整理しておきたいのが、筋力向上と筋肥大の違いです。
筋力向上は主に中枢神経系の適応(一度に動員できる筋線維の数や発火頻度の向上)に起因し、高重量(1〜5レップ程度)で最も高まります。一方、筋肥大は筋肉そのものの断面積の拡大であり、後述する「総負荷量」を十分に確保することが求められます。プログレッシブオーバーロードのやり方を確立する上では、この両者の違いを理解し、現在の目的に沿った刺激を段階的に積み増していく視点が欠かせません。