首相の権力基盤の強靭さを測る客観的指標が「在職日数」です。日本の憲政史において、長期にわたり権力を維持した首相と、わずか数か月で退陣を余儀なくされた首相の明暗は極めて鮮明です。
歴代最長政権を築いたのは安倍晋三であり、第1次政権と第2次〜第4次政権を合わせた通算在職日数は3,188日(連続在職日数も2,822日で歴代最長)に達しました。これに続くのが、明治期の桂太郎(通算2,886日)、戦後の佐藤栄作(2,798日)、伊藤博文(2,720日)、吉田茂(2,616日)です。これら長期政権の共通点は、党内基盤の圧倒的掌握、明確な外交・経済ビジョン、そして強固な官邸主導体制の確立にありました。
一方、歴代最短在任期間を記録したのは東久邇宮稔彦王の54日です。敗戦直後の1945年8月17日に皇族首相として事態収拾のために登板したものの、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による治安維持法の撤廃要求や内政干渉方針に反発し、短期間で内閣総辞職を選びました。武力解除や降伏文書調印という歴史的使命を担った特異な政権であり、平時の政権崩壊とは性質を異にします。平時における最短政権としては、明治期の第3次山縣有朋内閣直前に組閣された第1次大隈重信内閣(憲政党の内紛により132日で崩壊)や、戦後の羽田孜内閣(連立離脱により64日で退陣)が知られています。