疑いが晴れただけでなく、近年の予防医学では「コーヒーが持つ生体防御機能」に熱い視線が注がれています。日本の公衆衛生の指針を担う国立がん研究センターの膵臓がん予防に関する疫学調査(JPHC研究)をはじめ、数十万人規模を対象とした国内外の長期追跡調査において、驚くべきデータが次々と発表されています。
コーヒー豆には、強力な抗酸化作用を持つポリフェノールの一種「クロロゲン酸」が極めて豊富に含まれています。この成分が体内の慢性炎症を抑制し、DNAの酸化損傷を修復する働きを担います。さらに見逃せないのが、糖代謝における好ましい作用です。コーヒーの継続的な摂取は、膵臓のランゲルハンス島β細胞の疲弊を防ぎ、インスリン抵抗性を改善することが分かっています。膵臓への慢性的な高負荷を低減させることが、結果的に細胞の悪性化を食い止める防波堤として機能するメカニズムです。
気になる「摂取量」について、2020年代に統合された大規模メタアナリシスでは、膵臓がんのリスク低下をもたらす1日の杯数は「1日1杯から3杯程度」が最も安定した防御的相関を示しています。全く飲まないグループと比較して、発がんリスクが10〜15%程度低明したとする報告も相次いでいます。ただし、4杯〜5杯以上の過剰摂取になるとリスク低減効果が頭打ちになる、あるいは胃粘膜や交感神経への刺激といった副次的ストレスが懸念されるため、節度ある日常的な愛飲が黄金律と言えます。