読者の最大の関心事である「国保と社保どっちが安いのか」という問いに対し、単一の答えは存在しません。家族構成と前年所得、そして居住する自治体によって答えが180度反転するためです。
たとえば単身者で年収300万円前後の場合、社保の健康保険料(介護保険なし・40歳未満)は協会けんぽ東京支部を例に取ると月額約1万2,500円程度。一方、国保料は自治体ごとに計算式が異なるものの、均等割(年4〜6万円程度)と所得割が合算され、単身であれば年間保険料は社保とほぼ拮抗するか、自治体によっては国保がわずかに安くなるケースもあります。
しかし、配偶者と子ども2人の「4人世帯」になった瞬間に力関係は完全に崩壊します。社保であればどれだけ家族が増えても保険料は本人の給料分のみで1円も上がりませんが、国保には国保と社保の扶養基準の違いが冷酷に作用します。国保には被扶養者の枠組みがなく、収入ゼロの未就学児や乳幼児であっても「1人あたり年3万〜5万円程度」の均等割保険料が機械的に加算されます(未就学児の均等割5割軽減措置はあるものの、世帯全体の負担増は免れません)。家族を持つ層にとっては、社保が金銭面で圧倒的優位に立ちます。
もう一つの重要な分岐点が、退職後の任意継続と国保の比較です。会社を退職した際、最長2年間にわたって前職の社保を継続できる「任意継続」制度があります。在職中は会社が半分払ってくれていたため、任意継続を選ぶと保険料は2倍になります。一見すると大損に思えますが、任意継続には「標準報酬月額の上限(協会けんぽでは30万円程度)」が設定されています。
在職時の年収が600万円以上あった高所得者の場合、国保を選ぶと前年の高収入を基準に上限一杯(年間100万円超)まで保険料を請求される事態が頻発します。この場合、上限キャップがかかる任意継続を選んだほうが、年間数十万円も支払いを圧縮できるという逆転現象が起こります。
さらに個人事業主の国保と社保の負担額比較において、近年注目を集めているのが「マイクロ法人(資産管理会社)」の設立です。個人事業主としての所得が伸びて国保料が上限(2026年現在は年100万円以上)に達してしまった事業者が、自ら設立した法人で役料を低く設定して社会保険へ加入し、個人事業の利益に対する国保税の圧迫を回避する手法が広く実践されています。