主要歌詞検索サービス(歌ネット、UtaTenなど)で常に歴代上位のアクセス数を誇る『終わりなき旅』。その歌詞全文を俯瞰すると、一般的な応援ソングに見られる「頑張れ」「君ならできる」といった他者発信の安易な肯定句が一切排除されていることに気づかされます。
歌い出しの「息を切らしてさ 駆け抜けた道を 振り返りはしないのさ ただ未来だけを見据えながら」という言葉には、過去の栄光にも後悔にも囚われず、前進するしかないという切迫した心理状態が映し出されています。さらに曲中盤では「カンナみたいにね 命を削って さぁ 心に刻み込むんだ」という強烈なメタファーが登場します。自らの魂を物理的に削り出しながら表現を生み出す、創作者としての凄絶な覚悟が刻み込まれています。
そして、日本のポップス史上に残る名フレーズとして語り継がれるのが、以下のパンチラインです。
「高ければ高い壁の方が 登った時 気持ちいいもんな」
心理学における「認知的再評価(Cognitive Reappraisal)」の観点から見ても、このフレーズは極めて卓越しています。眼前の困難やストレス要因を「自分を苦しめる障害」として捉えるのではなく、「乗り越えた先の快感や自己成長をもたらす装置」へと瞬時に意味を書き換える認知的変容を促します。さらに、「閉ざされたドアの向こうに 新しい何かが待っていて」という一節は、外的な環境要因に依存せず、自らの手でドアを開けるという「内発的動機づけ(自己決定理論)」を力強く後押しします。
小学生でも理解できる平易な「ひらがな表現」をベースにしながら、深層心理の最も根源的な痛みに届く言葉選びこそ、桜井和寿というソングライターの真骨頂です。