Fukaseの最大の武器は、一度聴けば誰もが判別できる中性的なハイトーンボイスです。しかし、2010年のインディーズデビューから現在に至るまで、その歌唱スタイルと声質は大きく進化を遂げています。
初期は「オートチューン」と呼ばれるピッチ補正エフェクトをあえて過剰にかけ、機械的な無機質さと切迫感を演出していました。しかし、2015年頃の『Dragon Night』や『ANTI-HERO』以降は、海外プロデューサーとの協業を経て、地声とファルセットを滑らかに往復するハイブリッドなミックスボイスを確立。近年では、年齢を重ねたことによる低音域の深みと、息成分(ブレス)を豊かに含んだ温かみのある歌唱へとシフトしています。
さらに表現者としての分岐点となったのが、2021年公開の映画『キャラクター』での俳優デビューです。菅田将暉とダブル主演を務め、猟奇殺人鬼・両角役を怪演。第45回日本アカデミー賞新人俳優賞や報知映画賞新人賞を受賞するなど、映画界に強烈な爪痕を残しました。この映画で見せた「声の抑揚による心理支配」は、その後の楽曲におけるボーカル表現にも明確な深みを与えています。