結論から整理すると、女性の生理痛(月経困難症)は、剥離した子宮内膜を体外へ押し出すために分泌される「プロスタグランジン」が子宮を過剰に収縮させることで生じます。したがって、子宮を持たない男性に全く同じ機序の生理痛が発生することは解剖学的にあり得ません。
それにもかかわらず、「男の生理痛」という言葉が定着しつつある背景には、男性の生理痛の正体として医学的・臨床的に注目される2つの大きな要因があります。それが「男性ホルモンの周期変動」と「骨盤腔内・消化器の器質的疾患」です。
女性の体積変化や排卵周期(約28日周期)ほど目に見える形ではありませんが、男性ホルモンの代表格であるテストステロンも常に一定ではありません。近年の時間生物学および内分泌学の研究では、テストステロンには以下のような複層的な波が存在することが明らかになっています。
- 日内変動:早朝にピークを迎え、夕方から夜間にかけて低下する24時間周期。
- 月間・季節変動:ストレス負荷、睡眠環境、日照時間や気候の変化によって数週間〜数ヶ月単位で生じる緩やかな波。
このテストステロン値が一時的に急落するタイミングで、女性のPMS(月経前症候群)に酷似した倦怠感、イライラ、頭痛、下腹部の張りといった自律神経失調症状が出現します。これが「男性にも周期的な不調=生理痛のような現象がある」と体感される根本原因です。