寺尾の相撲を語る上で欠かせないのが、見る者を釘付けにした「高速ツッパリ」です。幕内力士の平均体重が150キロを超えていく時代にあって、寺尾の現役時の体重は115キロ前後。体格差を補うために磨き上げたのが、機械のように正確で凄まじい回転数を誇る突っ張りの連打でした。
「相手の懐に入らせない」「引いたら負け」という信念のもと、立ち合いから鋭く踏み込み、休む間もなく両手を繰り出す攻撃相撲は、当時の実況で「回転寿司のよう」と形容されるほどのスピードを誇りました。決して変化技に頼らず、真正面から突進する潔さがファンの心を揺さぶったのです。
中でも横綱・千代の富士との激闘や、若貴ブームの主役・貴花田(後の横綱・貴乃花)との気迫みなぎる一番は相撲史に残る名場面として知られます。1991年春場所、当時新進気鋭だった貴花田との対決では、激しい張り手と突っ張りの応酬の末に敗れはしたものの、土俵上に漂う凄まじい気迫は日本中を沸かせました。「負けてなお強し」と称えられた生き様こそ、寺尾が名勝負製造機と呼ばれた最大の理由です。