ハクがもうひとつの姿として見せる「白龍」の形態は、東洋の伝統的な龍神信仰と、日本古来の蛇神のイメージが見事に融合したデザインです。滑らかな白銀の鱗にエメラルドグリーンの鬣(たてがみ)、そして猛禽類を思わせる鋭い爪と蛇のようにしなやかな飛翔曲線は、スタジオジブリのアニメーター陣による驚異的な描画力によって生み出されました。制作現場では、龍が苦悶しながら苦い団子を飲み込むシーンを描くにあたり、ウナギの頭を抑えつける観察や犬の口をこじ開ける動作など、極めて泥臭い生物的リアリズムが追求された逸話も残されています。
そのハクに永遠の命を吹き込んだのが、当時弱冠14歳であった声優・入野自由(いりのみゆ)です。ハクの外見上の年齢設定は12歳前後の少年とされていますが、神としての悠久の時を内包する落ち着きと、思春期特有の繊細さを併せ持つ声質が求められました。オーディション当時の中学生ならではの自然な声変わり前の透明感、そして凛とした気品が宿る芝居は、計算では作り出せない奇跡的なキャスティングとして映画史に刻まれています。