制作発表当初、インターネット上では「漫画原作の実写化でまた山﨑賢人なのか」「年齢や体格のイメージが異なるのではないか」という懐疑的な見方が少なくありませんでした。しかし、本編が公開されるや否や、そうした先入観は賞賛へと転じました。その背景には、主要キャストが課した極限の役作りがあります。
主人公・杉元佐一を演じた山﨑賢人は、日露戦争の激戦地・二百三高地を生き抜いた「不死身の杉元」の説得力を宿すため、撮影前に約10kgの筋肉増量を敢行。氷点下の北海道ロケにおいて、川に飛び込むシーンや泥まみれの肉弾戦をスタントなしでこなすなど、身体性を極限まで高めて撮影に挑みました。公開当時のメイキングや関係者の証言によると、毎朝数時間を要する顔の傷痕特殊メイクの最中から精神を研ぎ澄ませ、杉元の持つ「凄絶な殺気」と「優しき素顔」のグラデーションを自然に表現していったといいます。
一方、アイヌの少女・アシㇼパ役を務めた山田杏奈は、実年齢(撮影当時22歳前後)と劇中設定とのギャップを、圧倒的な眼力と所作のリアリズムで見事に埋めてみせました。アイヌ文化監修陣の綿密な指導のもと、アイヌ語の発音や小刀・弓矢の扱い方を体得。原作の大きな魅力である「変顔」や味噌を「オソマ」と誤解するユーモラスな芝居も一切妥協なく演じ切り、文化への敬意とエンターテインメント性を両立させました。
さらに、狂気のカリスマ・鶴見中尉を演じた玉木宏の怪演、冷徹な孤高のスナイパー・尾形百之助を体現した眞栄田郷敦のシャープな立ち振る舞い、そして脱獄王・白石由竹のコミカルさと哀愁を体現した矢本悠馬の演技など、配役の隅々に至るまで「原作の魂を損なわない」という制作陣の強い意志が反映されています。