日本の大学受験において当たり前のように使われる「偏差値」は、母集団の中で自分がどの位置にいるかを示す統計的な数値です。しかし、アメリカ大学に入試偏差値が存在しない理由は極めて明快であり、入試システムそのものの設計思想が日本と根本から異なる点にあります。
日本では大学入学共通テストや各大学の個別試験の点数によって、上から機械的に合格者が決定されます。これに対し、米国では1636年に創設された米国最古の大学であるハーバードをはじめ、多くの名門校が「ホリスティック審査(Holistic Review)」と呼ばれる包括的評価を導入しています。選考では、高校4年間の成績(GPA)、標準化テスト(SATやACT)のスコアだけでなく、課外活動の実績、複数本のエッセイ(志望動機書)、高校教員やカウンセラーからの推薦状、卒業生面接など、志願者のバックグラウンドや人間性を多角的に審査します。
そのため、「〇点取れば確実に合格できる」「この模試でA判定が出れば受かる」という単一のモノサシが存在せず、偏差値を算出する前提自体が成立しません。では、なぜ予備校や留学支援機関ではハーバード大学の偏差値換算として「偏差値80」という表現が使われるのでしょうか。
これは、全米および世界中から集まる出願者の学力水準を日本の母集団に当てはめた際、上位0.13%未満(正規分布における偏差値80以上)の極限値に相当することを受験生に直感的に伝えるための便宜上のメタファーです。事実、合格者の高校評定平均値(GPA)は4.0満点中3.9〜4.0が標準であり、学力面だけで見ても日本の最難関国立大学や医学部に現役合格するトップ層と同等以上の学習歴が前提条件となります。