数多くの少年漫画に登場する悪役とルシウスが一線を画す点は、彼自身が「自分は世界を救う絶対の善である」と本気で信じ切っている点にあります。ルシウスの真の目的は、私利私欲による世界の征服ではなく、差別、争い、貧困、そして死が存在する「不完全な人類の救済」です。
彼が導き出した狂気の結論は、現在の人類を一度すべて滅亡させた上で、自らの霊魂魔法によって全員の魂を漂白・改変し、悪魔の魔力と不老不死の肉体を与えた「聖騎士(パラディン)」へと進化させることでした。誰もが平等に魔力を持ち、悪意を抱く余地のない絶対調和の世界を築き、その頂点で永遠に君臨することこそが、ルシウスの提唱する「真の平和」です。
この目的のために生み出された「聖騎士」の存在は、アスタたちに精神的・道徳的な激痛を突きつけました。ルシウスの手によって、アスタの初恋の相手であるシスター・リリーが魂を改変され、冷酷な使徒として立ちはだかりました。さらに、過去の戦いで命を落とした英雄たち——ヤミの無二の親友であったモルゲン・ファウスト、ノエルの実母であるアシエ・シルヴァなど、戦う者たちのかけがえのない絆そのものが、ルシウスの尖兵として冒涜的な形で蘇らされたのです。
自らの意志を剥奪され、ルシウスへの崇拝を口にしながらかつての仲間に刃を向ける聖騎士たちの姿は、物理的な脅威以上に魔法騎士たちの心を深く傷つけ、精神的な防衛線を崩壊寸前へと追い込みました。