上野エリアには「東京国立博物館」「国立西洋美術館」「東京都美術館」など日本を代表する名館が密集していますが、上野恩賜公園の美術館ごとの違いを正しく把握している来館者は意外と多くありません。国立や都立の施設が膨大な収蔵品(常設展)の保存・研究・公開を主軸としているのに対し、公益財団法人日本美術協会が運営する上野の森美術館は「私立」の美術館であり、常設展示を持たない企画展示特化型のスペースとして機能しています。
1972年の開館以来、同館は既成概念にとらわれない柔軟なキュレーションを展開してきました。その象徴とも言えるのが、現代の具象絵画における登竜門として知られる上野の森美術館大賞展の歴代受賞作品群です。若手作家の発掘・育成に寄与し続ける一方で、サブカルチャーやメディアアート、世界的ポップアイコンの展覧会をいち早く誘致するなど、大衆性と芸術性を高いレベルで融合させてきました。この「軽やかさと先鋭性」こそが、重厚な国立系ミュージアムとは一線を画す最大のアイデンティティです。