本作におけるブランド博士のハイライトといえば、調査に向かう惑星の優先順位を巡り、マシュー・マコノヒー演じるクーパーと激論を交わす場面です。彼女は恋人であるウルフ・エドマンズ飛行士が待つ惑星へ向かうべきだと主張し、反発するクーパーに対して次の言葉を放ちました。
「愛は私たちにも感知できるけれど、時間も空間も超越する。愛には何らかの意義があるのかもしれない。私たちにはまだ理解できない、高次元の証拠なのかもしれない」
公開当時、一部のハードSFファンからは「論理的な物理学映画に突如として持ち込まれた非科学的な精神論」と疑問視する声も上がりました。しかし、結末まで見届けた観客は、このセリフが作品全体の核心を突いた緻密な伏線回収であったことに気付かされます。
物語の終盤、ブラックホール「ガルガンチュア」に身を投げたクーパーは、五次元空間「テセラック」に到達します。そこは過去・現在・未来が物理的な空間として広がる異世界でしたが、無限の時間の座標軸から愛娘マーフの本棚へとクーパーを導いた唯一の羅針盤は、重力波でも数式でもなく、娘への強い思慕の情でした。ブランド博士の提唱した「愛は五次元を貫く物理法則のような力である」という仮説は、理知を超えた宇宙の構造そのものとして証明されたのです。