1981年、日本テレビ系『スター誕生!』での合格を機に、小泉今日子は芸能界へと飛び出す。上京とデビューは、彼女にとって憧れの世界への切符であると同時に、複雑な家庭環境から脱出するための唯一の手段でもあった。わずか15歳で親元を離れ、事務所の寮での生活を始めた彼女は、仕送りを続けながらも、母親に対して拭いきれないアンビバレントな感情を抱き続けることになる。
当時の思いについて、彼女が自らペンを執った数々のエッセイ・自伝の中でも、率直な筆致で触れられている。「なぜもっと普通の家庭のように愛してくれなかったのか」という憤りと、「自分を産み、育ててくれた」という抗えない情愛。世間が「花の82年組」のトップアイドルとして熱狂する裏側で、小泉は母との見えない心理的距離に苦悩し、その痛みを自立への強いエネルギーへと変えていった。