ビルの入口にある重厚な階段を下りた瞬間、外の喧騒は遮断され、暖色系の光に包まれた非日常の空間が広がります。純喫茶丘の最大の特徴は、地下1階から地下2階へと続く立体的な吹き抜け空間と、天井から吊り下げられた巨大なクリスタル風シャンデリアです。
壁面を彩るステンドグラス風の装飾パネル、飴色に輝く木目調のパーテーション、そして重厚なベロア調のソファ。当時のオーナーが「贅を尽くした社交場」を目指して設計したインテリアは、効率性とミニマリズムが主流となった現代のカフェチェーンでは決して再現できない重厚感を醸し出しています。
当時の特番インタビューや喫茶文化研究の手記において、昭和中期の喫茶店は「日常から最も手軽に逃避できるモダンな異界」であったと語られています。純喫茶丘に一歩足を踏み入れた人々が口を揃えて「タイムスリップしたような錯覚に陥る」と語る背景には、細部にまで職人の美意識が宿る空間演出の力があります。