プロビデンスの目を世界で最も有名な図像へと押し上げたのが、アメリカ合衆国の1ドル紙幣です。裏面の左側に配置された円形デザインには、13段の未完成のピラミッドと、その頂点で輝く目が描かれています。これは1782年に制定されたアメリカ合衆国の国章(グレート・シール)の裏面デザインそのものです。
この紋章を巡っては「建国者たちが秘密結社の意図を紙幣に刻み込んだ」という噂が絶えませんが、デザイン委員会の記録を精査すると極めて現実的な国家の願いが見えてきます。13段の石積みは建国当初の13植民地を表し、ピラミッドが未完成であることは「国家が今後も成長と建設を続けていく」という意志を示しています。そして頂点の目は、新しい国家の歩みが神の摂理によって祝福されていることを象徴しているのです。
ピラミッドの上下に記されたラテン語の銘文もその意図を補強します。上部の「ANNUIT COEPTIS」は「神は我らの試みを支持された」、下部の「NOVUS ORDO SECLORUM」は詩人ウェルギリウスの詩句から引用された「時代の新秩序」を意味します。なお、この国章裏面が1ドル紙幣に印刷されるようになったのは、建国から150年以上経った1935年のフランクリン・ルーズベルト大統領の時代でした。