杏の愛好ぶりは、一般的なタレントの「歴史好き」というライトな枠組みを遥かに凌駕しています。読書家として知られ、歴史小説や専門的な美術図録を読み込んできた彼女は、仏像の制作技法(乾漆造、寄木造、一木造など)や、時代背景による様式の変遷まで深く把握しています。
その知性を象徴するのが、奈良公園内に位置する奈良国立博物館(なら仏像館・名品展)への並々ならぬ敬意です。毎秋開催される「正倉院展」はもちろん、特別展の折にはスケジュールを調整して単身駆けつける熱意を見せてきました。展示ケース越しに天平の造形美を細部まで観察し、音声ガイドに頼ることなく、造形が語りかける歴史的背景を読み解いていくスタイルは、学芸員顔負けの深度を持っています。
「仏像は美術品であると同時に、当時の人々が疫病や戦乱のなかで何に縋り、何を祈ったのかを今に伝えるタイムカプセルである」という確固たる視点を持っているからこそ、彼女の言葉には重みと真実味が宿ります。