気象レーダーを過信するあまり、重大な危機を見落としてしまう典型的な誤解がいくつか存在します。その代表例が「名古屋市中心部で降っていなければ春日井も大丈夫」という思い込みと、「レーダーの予報画面で1時間後に雨雲がないから安全」という静的な解釈です。
第1の盲点は、春日井市の過去の雨雲レーダーを時系列で遡って検証しないことです。現在のレーダー画像だけを見ると単発の積乱雲に見えても、過去2〜3時間の履歴動画を再生すると「同じ場所で次々と積乱雲が生成され、列をなして同じ進路を通過している」パターンが浮き彫りになります。これこそが局地的なバックビルディング現象(線状降水帯の前兆)であり、春日井市周辺にかかる線状降水帯の予測情報が気象庁から発表された段階では、すでに極めて危険な降雨積算量に達しているケースがあります。
第2の盲点は、レーダーの「ブラインド(死角)」です。気象レーダーは上空数キロメートルの雨粒をスキャンしているため、地表近くの超低空で急激に凝結・発達する初期の積乱雲は、最初の数分間レーダーに映らないことがあります。「レーダー上は青色(弱い雨)なのに、現場では前が見えないほどの豪雨になっている」というギャップは、発達初期のゲリラ豪雨特有の物理現象です。上空の雲の厚みや急な冷たい風の吹き出しといった五感による環境変化を軽視してはなりません。