日本における鬼の造形は、時代とともに劇的な変容を遂げてきた。かつては共同体を脅かす天災や疫病、異邦人のメタファーとして描かれることが多かった異形の存在。しかし、現代の物語作家たちはその内面に分け入り、彼らが鬼へと身を堕とさざるを得なかった社会的剥奪や情念の暴走を描き出す。
とりわけ1990年代、藤田和日郎が世に放った名作『うしおととら』は、伝奇アクションの文脈に決定的な転換点をもたらした。主人公と妖怪「とら」が織りなす魂の衝突は、人と異形が互いを認め合う過程の尊さを浮き彫りにし、後続のクリエイターたちに計り知れない影響を与えている。悪意の塊として登場したはずの存在が、物語の終盤で見せる剥き出しの哀しみ。読者はそこに、自分自身の影を見る。