動物病院に駆け込む飼い主の問診票やコミュニティの声を調査すると、視力低下の兆候は「目の色が変わったこと」よりも、日常のささいな行動変化として先に現れているケースが目立ちます。特に見落とされやすいのが犬の白内障初期症状です。
「夜の散歩に行きたがらなくなった」「部屋の電気を消すと動けなくなる」「ボールを投げても目で追わなくなった」といった証言は、典型的な初期症状のシグナルです。白内障の初期段階(初発白内障〜未熟白内障初期)では、水晶体の一部にわずかな濁りが生じるだけですが、薄暗い環境下でのコントラスト感度が著しく落ちるため、薄明かりでの行動に躊躇が見られるようになります。
さらに見過ごされがちなのが、1〜5歳前後で発症する若年性白内障の理由です。「まだ若いから老化の病気ではない」と思い込んで放置され、気づいたときには成熟白内障に達していたという症例が後を絶ちません。若年性白内障は主に遺伝的素因に起因しており、トイ・プードル、ボストン・テリア、柴犬、アメリカン・コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザーなどの犬種で好発します。遺伝性の白内障は、老齢性のものに比べて進行スピードが圧倒的に速く、わずか数週間から数か月で水晶体全体が混濁し、視力を奪う特徴を持っています。