自らに残された時間がわずかであると悟ったメルエムは、世界の支配や種の繁栄という王としての責務をすべて放棄し、一人の少女のもとへと向かいました。東ゴルドー共和国の軍儀王者である盲目の少女・コムギです。
メルエムの精神構造は、コムギとの盤上での対局を通じて劇的な変容を遂げていました。当初は「力なき弱者は死ぬべき存在」と断じていた王が、盤上でどれほど知略を尽くしてもコムギに一勝もできず、彼女の命を賭した気迫と純粋な献身に触れる中で、「暴力では決して屈服させられない人間の崇高な価値」を知ることになります。
地下宮殿の暗闇の中で、毒により視力を完全に失ったメルエムがコムギと軍儀を打ち続け、静かに問いかける最期の対話は、HUNTER×HUNTER全編を通じた最高峰の名シーンとして語り継がれています。
「コムギ、おるか」
「はいはい、何回も呼んでも……すぐそこにいますよ」
毒の感染力を知るメルエムは、自らと一緒にいれば命を落とすことを告げますが、コムギは「わだすは……この日のために生まれて来ますた……!」と涙を流し、王と共に逝く道を選びました。
この場面に対して、連載当時から大手ポータルサイトのレビューやSNS、読者コミュニティでは「敵味方の枠組みを超えた究極の純愛」「少年漫画の枠を超えた文学的到達点」といった声が絶えません。母である女王が死に際に遺したメルエムという名前の意味「すべてを照らす光」の通り、王は世界を焼き尽くす独裁の光ではなく、コムギというたった一人の少女の暗闇を優しく包み込む光となってその生涯を閉じたのです。