「気管虚脱と診断されたら、愛犬の寿命は尽きてしまうのか」と絶望的な思いを抱く飼い主は少なくありません。しかし、臨床獣医師の集積データによれば、気管虚脱そのものが直ちに余命宣告を意味するわけではありません。
ステージ1やステージ2の段階で異変を察知し、適切な内科治療や生活環境の改善を講じた犬の多くは、平均寿命である13〜16歳前後まで穏やかに天寿を全うしています。予後を急激に悪化させる真の脅威は、気管の変形そのものよりも、呼吸苦に伴う低酸素血症の長期化や、二次的に誘発される肺高血圧症、右心不全、熱中症の併発です。
一方で、重度のステージ4へ進行し、頻繁に失神やチアノーゼを繰り返す状態を放置した場合の予後は極めて厳しくなります。気道が閉塞した際のパニックによる体温急上昇(41度以上の悪性高熱)や急性肺水腫によって、突然死を引き起こすリスクが跳ね上がるためです。寿命を縮めるか全うできるかは、重症化する前にいかに進行をブロックできるかにかかっています。