作中には「破道之九十一 千手皎天汰炮(せんじゅこうてんたいほう)」や、山本元柳斎重國が身を賭して放った「破道之九十六 一刀火葬(いっとうかそう)」、さらには「破道之九十九 五龍転滅(ごりゅうてんめつ)」など、数々の強力な鬼道が存在する。その中にあっても、「黒棺」が特別な存在感を放ち続ける理由はどこにあるのか。
最大の要因は、言葉の持つリズム(韻律)と視覚演出の完璧な調和にある。「紋章」「器」「王女」「人形」といった退廃的なゴシックホラーを思わせる名詞のチョイス、そして「結合せよ/反発せよ」というミニマルで鋭利な命令形への展開。この言葉の緩急が、黒い箱が組み上がり対象を閉じ込めるアニメーションのテンポと完全に一致しているのだ。
技名、詠唱文、発動ビジュアル、術者のカリスマ性、そして声優の演技。あらゆる要素が奇跡的なバランスで噛み合っているからこそ、「黒棺」は連載終了から長い年月が経った今もなお、ジャンプ作品史上最高峰の詠唱術として君臨している。