インターネット上の情報を見ていると、「南昌荘は秋の紅葉シーズン以外に行く意味が薄い」といった誤解を目にすることがあります。しかし、これは南昌荘の立体的な魅力を半分も見落としていると言わざるを得ません。
第一の誤解は、「床もみじ」の美しさが秋に限定されているという思い込みです。実際には初夏から夏にかけての「青もみじ」の季節こそ、瑞々しい生命力に満ちた緑陰が漆黒の床に鮮烈に反射し、紅葉期以上の清涼感と静けさを味わうことができます。観光客が集中する秋と比べ、ゆったりと自分だけの時間を過ごせる点でも、通の間では青もみじの季節を最高峰に推す声が少なくありません。
第二の誤解は、「常にネット画像のように鮮やかなコントラストが見られる」という期待です。床もみじの反射は、天候や太陽光の入射角に大きく左右されます。直射日光が強すぎる晴天の正午よりも、やや雲の広がった曇天や、陽光が斜めから差し込む午前中・夕刻のほうが、障子を通した間接光とのバランスが取れ、反射がより深く美しく際立ちます。雨の日には濡れた庭石と滴る青葉がしっとりと映り込み、水墨画のような幽玄な美を醸し出します。いつ訪れても「その日の光と天候」が一期一会の景色を作り出す点こそが、南昌荘の真の醍醐味です。