劇団本体での上演がない一方で、外部舞台における『黒蜥蜴』の歴史において、宝塚OGたちは極めて鮮烈な足跡を残しています。三島由紀夫が遺した格調高く詩的なセリフ回し、絢爛豪華なドレスの着こなし、そして悪の華としての気品――これらを完璧に体現できる役者として、宝塚で鍛え上げられたOGたちに白羽の矢が立ってきた経緯があります。
特に演劇界で大きな話題を呼んだのが、世界的な演出家デヴィッド・ルヴォーが演出を手がけた2018年の舞台『黒蜥蜴』です。主演の黒蜥蜴役を中谷美紀、明智小五郎役を井上芳雄が務めたこの革新的な舞台において、物語の鍵を握る岩瀬庄兵衛の娘・早苗役(および令嬢の影)を演じたのが、元雪組トップスターの朝海ひかるでした。圧倒的な透明感と繊細な身体表現でルヴォー演出の世界観を完璧に支え、演劇関係者から絶賛を浴びました。
以下の比較表は、演劇界における主な『黒蜥蜴』上演の変遷と、宝塚歌劇および宝塚OGとの関わりを整理した客観的データです。
このように、宝塚歌劇団という組織そのものは上演していないものの、卒業したトップスターや実力派OGが外部の大舞台で『黒蜥蜴』の世界を支えてきた事実が、ファンの脳裏に「宝塚と黒蜥蜴の不可分な結びつき」を強く刻み込んでいるのです。