「今年使い切れなかった灯油は、来シーズンまでポリタンクを物置にしまっておけば再利用できるのではないか」と考えるユーザーも少なくありません。しかし、石油連盟や日本ガス石油機器工業会(JGKA)の公式見解において、灯油の使用期限は原則として「購入したシーズン内(約半年)」と定められています。
長期間放置された灯油は、空気中の酸素、紫外線、そして昼夜の寒暖差による結露水と接触することで、急速に劣化が進みます。これが余った灯油の保管期限と劣化の真相です。劣化灯油には大きく分けて2種類が存在します。
- 酸化灯油(変質灯油):日光や熱によって炭化水素が酸化し、淡黄色や褐色に変色したもの。酸っぱい刺激臭を発する。
- 不純灯油(混触・加水灯油):結露や雨水が混入した灯油、あるいは前年に使用した別の油(機械油や軽油、ガソリン)が混ざったもの。底部に水滴や沈殿物が生じる。
健全な灯油は水のように完全に無色透明です。わずかでも黄色く濁っていたり、酸臭が漂ったりするものはすでに変質しています。このような灯油を「もったいない」と翌冬の暖房機器に使用すると、持ち越し灯油の故障リスクが現実のものとなります。最新の石油ファンヒーターは精密な電子制御を行っているため、変質灯油に含まれるタール成分が燃料噴出部の気化器(ニードルバルブ)に固着します。結果として点火不良、激しい異臭を伴う白煙の噴出、最悪の場合は不完全燃焼による一酸化炭素中毒を引き起こします。暖房器具メーカーのアフターサービス窓口には毎年秋口、持ち越し灯油の使用による故障修理(修理代金15,000円〜25,000円前後)の依頼が殺到しています。わずか数百円から千円程度の灯油代を惜しんだ結果、ヒーター本体を買い替える羽目になるのは極めて不合理な経済的損失です。