大臀筋歩行が発現する直接的な引き金は、股関節伸展筋力の著しい低下です。臨床医学およびリハビリテーション分野のデータに基づくと、その原因は単一の加齢変化にとどまらず、多角的な病態が関係しています。
最も典型的な要因のひとつが、大臀筋を支配する下臀神経(L5〜S2)の障害です。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、仙骨神経叢の損傷、または骨盤骨折や人工股関節全置換術(THA)などの術後合併症により、神経伝達がブロックされることで筋出力が急激に失われます。
また、長期臥床や廃用症候群による筋萎縮、重度の股関節変形による可動域制限も大きな原因です。臨床現場では、徒手筋力検査法(MMT: Manual Muscle Testing)を用いた評価が行われます。大臀筋の筋力が「MMT 3(重力に抗して完全可動域を動かせる)」未満、特に「MMT 2(重力を除けば動かせる)」以下に落ち込むと、歩行時の自重負荷に耐えきれず、顕著な大臀筋歩行が出現します。