この表現は、かつて日本人の暮らしに密着していた調理の現場に由来する。冷めてしまった蒸し物や飯を、再び蒸籠(せいろう)に入れて温め直す行為がその起源だ。料理を温め直すと、出来立ての風味は失われ、かえって水っぽくなったり硬くなったりして味が落ちる。そこから派生して「一度終わった事柄を再び蒸気を立てるように言い立て、事態を悪化させる」というネガティブなニュアンスを帯びた慣用句へと発展した。
言語の系譜を遡ると、国語学者の金田一京助をはじめとする研究者たちが編纂に携わってきた辞書文化の中でも、その記載は極めて明確だ。岩波書店の『広辞苑』や三省堂の『大辞林』といった代表的な大型辞書を開くと、共通して「済んだことを再び持ち出す」という意が記されている。大手出版社を筆頭とする出版業界の国語辞典編纂チームも、この言葉が持つ「後味の悪さ」や「非効率性」のニュアンスを一貫して記録してきた。単に古い出来事を思い出すことではなく、あえて不快感や論争を再燃させる行為である点が、この言葉の核心と言える。