大手コミュニティサイトやSNS、知恵袋等の声を調査すると、レストランでのテイスティングに対して多くの人が強いコンプレックスや不安を抱えている実態が浮き彫りになっています。
「高級レストランで一口飲んだあと、ソムリエに何とコメントすればいいか分からず沈黙してしまった」「『フルーティーで重みがありますね』と味の感想を言ったら、ソムリエに苦笑いされた気がして恥ずかしかった」といった体験談は後を絶ちません。これらはすべて、「テイスティング=味の論評」という誤った思い込みから生じる悲劇です。
現場のグランメゾンで腕を振るうシニアソムリエは、取材に対して次のように明かしています。
「お客様が緊張されて無理にワインの味を解説しようとされると、かえってこちらも恐縮してしまいます。ホストテイスティングの場で長々と味わいの講釈を述べる必要は一切ありません。状態確認が済んだら軽く会釈をいただくか、最初から『お任せします』と笑顔でパスしていただくのが、フロア全体のサービスを最も滑らかにする一番ありがたい対応です」
食事の主役はあくまで同伴者との豊かな時間や会話であり、ワインはその場を彩る小道具に過ぎません。形式的な作法に囚われて会話が途切れてしまうことこそ、同席者にとっても最も避けたい事態です。