花澤香菜が演じる甘露寺蜜璃の真価が世に知れ渡ったのが、2023年に放送された『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』でした。第1話で描かれたコミカルな温泉シーンや炭治郎との屈託のない触れ合いから一転、クライマックスにおける上弦の肆・半天狗の分身「憎珀天(ぞうはくてん)」との激突シーンは、声優界史上に残る名演として広く語り継がれています。
特にファンを震撼させたのが、内臓を揺るがすような絶叫とともに放たれる「恋の呼吸」の技名詠唱です。花澤は自身の喉の限界を試すかのように、全身全霊の咆哮をマイクに叩きつけました。この演技は、これまでの代表作(『化物語』の千石撫子や『PSYCHO-PASS サイコパス』の常守朱など)で見せてきた繊細さや知性とは一線を画す、野獣のような生命力に満ちていました。
続く『柱稽古編』では、隊士たちに対する柔軟性指導での愛らしい無邪気さと、産屋敷邸爆破から鬼舞辻無惨襲来という絶望的な急転直下において見せた悲痛な動揺を、わずかな息の震えだけで表現しました。甘露寺蜜璃というキャラクターが、ただの「萌えキャラクター」ではなく、心血を注いで生きる一人の女性として視聴者の胸に深く刻み込まれた瞬間でした。