高い声が出なくなった際、焦燥感からネット上のボイトレ動画を見漁り、高音発声法やミックスボイスの習得にいきなり挑む人がいます。しかし、これは火災が起きている建物の中で模様替えを始めるようなものであり、極めて危険です。
専門医・音声指導者が提示する「向いている人・慎重になるべき人の判断基準」
声の回復アプローチには、直ちに発声トレーニングを行ってよい層と、発声を一切停止して治療に専念すべき層の2種類が存在します。
- 即座にボイトレや自力訓練を控えるべき人:
・会話時にもかすれ声が出ている人
・喉に刺すような痛みや異物感がある人
・医師による内視鏡検査をまだ受けていない人
※この状態でトレーニングを重ねると、声帯結節の硬化や過緊張パターンの固定化を招き、最悪の場合、声を元に戻すための外科的手術を余儀なくされます。 - 発声リハビリや筋肉トレーニングが推奨される人:
・内視鏡検査で声帯にポリープや腫瘍がないと診断された人
・加齢による軽度の声帯萎縮と診断され、声門閉鎖力の向上を促された人
・過緊張発声と診断され、専門の言語聴覚士や指導者のもとで脱力法を学べる人
声帯に器質的な異常がないと判明した場合の初期リセット法としては、「リップロール(唇をプルプルと振動させる発声)」や「ストロー発声(細いストローをくわえて小さくハミングする管発声)」が医学的にも有効とされています。これらは声道に適度な背圧をかけ、声帯に強い衝撃を与えることなく、薄く引き伸ばす筋肉(輪状甲状筋)だけを穏やかにリハビリする手法です。