高橋康夫氏のキャリアは、日本のテレビドラマ史における黄金期そのものです。早稲田大学を卒業後、NHKに入局。ドラマ制作の現場で卓越した演出力と企画力を発揮し、瞬く間に若手エースディレクターとして頭角を現しました。
高橋氏が手がけた代表作には、大河ドラマ『風と雲と虹と』(1976年)や、脚本家・向田邦子氏の最高傑作と名高い『阿修羅のごとく』(1979年)、さらには山田太一脚本の伝説的ドラマ『男たちの旅路』シリーズなどがあります。人間の業や社会の暗部、家族の機微を鋭く切り取る演出手法は業界内外から極めて高い評価を受け、芸術祭優秀賞をはじめとする数多の賞を受賞しました。
NHK局内でも将来の幹部候補として嘱望され、チーフプロデューサーを歴任。退局後も制作会社の重役を務めるなど、まさにテレビ業界の重鎮として確固たる地位を築き上げました。三田佳子さんという大スターの「夫」という枠組みにとどまらず、高橋氏自身が一流の表現者・クリエイターとして日本の映像文化に多大な功績を残した人物です。